ツツジの園の大造園:果実植物から食虫植物まで

Anagallis
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目次

 クロンキスト体系(1981年)では、ツツジ目は以下の科を含んでいました。

  • ツツジ科 (Ericaceae)
  • イチヤクソウ科 (Pyrolaceae)
  • シャクジョウソウ科 (Monotropaceae)
  • ガンコウラン科 (Empetraceae)
  • キリラ科 (Cyrillaceae)
  • リョウブ科 (Clethraceae)
  • グルッビア科 (Grubbiaceae)
  • エパクリス科 (Epacridaceae)

 APG体系では、クロンキスト体系のツツジ目から移動した科はありません。むしろ、他の目から多くの科がツツジ目に統合されました。

APG体系でツツジ目に加えられた科とその由来

 APG IV体系(2016年)では、以下の科がツツジ目に加えられました。

  • カキノキ科 (Ebenaceae) – 旧エベナレス目から
  • サラセニア科 (Sarraceniaceae) – 旧ネペンテス目から
  • ロウバイ科 (Cyrillaceae) – 旧ツゲ目から
  • ペンタフィラクス科 (Pentaphylacaceae) – 旧ツバキ目から
  • スチラクス科 (Styracaceae) – 旧エベナレス目から
  • シンプロコス科 (Symplocaceae) – 旧エベナレス目から
  • テトラメリスタ科 (Tetrameristaceae) – 旧ツバキ目から
  • ツバキ科 (Theaceae) – 旧ツバキ目から
  • マタタビ科 (Actinidiaceae) – 旧ツバキ目から
ツツジ目への流入

食虫植物サラセニアの流入

 サラセニア科がツツジ目に統合された主な分子系統学的根拠は以下の通りです。

  • 葉緑体DNAのrbcL遺伝子とatpB遺伝子の配列解析
  • 核リボソームDNAの18S rDNA配列の解析
  • ミトコンドリアDNAのmatR遺伝子の配列解析

 これらの分析により、サラセニア科がロウバイ科やツツジ科と近縁であることが示されました。また、花の構造や胚珠の特徴にも類似点が見られました

ツバキ科、マタタビ科などの離弁花類の流入

 ツバキ科、マタタビ科などの旧離弁花類の科がツツジ目に統合された主な分子系統学的根拠は以下の通りです。

  • rbcL遺伝子やmatK遺伝子などの葉緑体DNA配列の解析
  • 核リボソームDNAのITS領域の配列解析
  • ミトコンドリアDNAの配列解析

 これらの分析により、これらの科がツツジ目の他の科と単系統群を形成することが示されました。特に、花の構造や胚珠の特徴など、形態学的にも共通点が見出されました。

ツツジ目の毒性

 ツツジ目には毒性を持つ植物が多く含まれています。

  • ツツジ科:多くの種がグラヤノトキシンを含み、中毒を引き起こす可能性がある
  • サラセニア科:消化酵素を含み、昆虫を捕食する
  • カキノキ科:未熟な果実に強い渋みがあり、タンニンを多く含む

 これらの毒性は、植物の防御機構として進化したと考えられています。

果実系のツツジ目

 ツツジ目には、以下のような重要な果実を生産する植物が含まれています。

  • カキ(カキノキ科 Ebenaceae):学名:Diospyros kaki
    • 高い栄養価と甘味を持つ果実で、生食やドライフルーツとして人気があります。
  • チャノキ(ツバキ科 Theaceae): 学名:Camellia sinensis
    • 緑茶、紅茶、烏龍茶などの原料となる重要な植物です。
  • ブルーベリー(ツツジ科 Ericaceae):学名:Vaccinium corymbosum(ハイブッシュブルーベリー)
    • 抗酸化物質を多く含む健康果実で、生食やジャム、ベーカリー製品に使用されます。
  • クランベリー(ツツジ科 Ericaceae):学名:Vaccinium macrocarpon
    • 酸味のある果実で、ジュースやソース、ドライフルーツとして広く利用されています。
  • ビルベリー(ツツジ科 Ericaceae):学名:Vaccinium myrtillus
    • ブルーベリーの近縁種で、アントシアニンを豊富に含む健康果実です。
  • ハックルベリー(ツツジ科 Ericaceae):学名:Gaylussacia 属の数種
    • 北米原産の食用ベリーで、ジャムやパイの材料として使用されます。
  • リンゴンベリー(ツツジ科 Ericaceae):学名:Vaccinium vitis-idaea
    • 北欧で人気の酸味のある赤い果実で、ジャムやソースに使用されます。
  • マンゴスチン(サポタ科 Sapotaceae):学名:Garcinia mangostana
    • 東南アジア原産の甘酸っぱい果実で、「果物の女王」と呼ばれています。
  • サポジラ(サポタ科 Sapotaceae):学名:Manilkara zapota
    • 中南米原産の甘い果実で、生食やデザートに使用されます。
  • スターアップル(サポタ科 Sapotaceae):学名:Chrysophyllum cainito
    • カリブ海地域原産の甘い果実で、独特の星型の断面が特徴です。
  • マモンチーリョ(サポタ科 Sapotaceae):学名:Pouteria sapota
    • 中南米原産の大型の果実で、甘くてクリーミーな食感が特徴です。
  • サルナシ(マタタビ科 Actinidiaceae):学名:Actinidia arguta
    • キウイフルーツの近縁種で、小型の食用果実を実らせます。
  • マタタビ(マタタビ科 Actinidiaceae):学名:Actinidia polygama
    • 果実は食用で、若芽や葉も食べることができます。
  • キウイフルーツ(マタタビ科 Actinidiaceae):学名:Actinidia deliciosa
    • ビタミンCが豊富で人気の果実で、生食やデザート、ジャムなどに使用されます。

 これらの果実は、経済的にも重要で、世界中で広く栽培されています。

ツツジ目の果実・食品

APG体系におけるツツジ目ツツジ科の変化

 APG体系では、ツツジ科の内部構造が大きく変化しました。ツツジ科は現在、以下の9亜科に分類されています:

  1. ツツジ亜科 (Ericoideae)
  2. スノキ亜科 (Vaccinioideae)
  3. イチヤクソウ亜科 (Pyroloideae)
  4. シャクジョウソウ亜科 (Monotropoideae)
  5. イチゴノキ亜科 (Arbutoideae)
  6. イワヒゲ亜科 (Cassiopoideae)
  7. ドウダンツツジ亜科 (Enkianthoideae)
  8. スティフェリア亜科 (Styphelioideae)
  9. ジムカデ亜科 (Harrimanelloideae)

 亜科の創設理由と変動内容:

 これらの亜科は、分子系統学的研究に基づいて設立されました。従来別科とされていたイチヤクソウ科、モノトロパ科、エパクリス科がツツジ科に統合されました。この再編成により、ツツジ科内の系統関係がより正確に反映されるようになりました。特に、旧エパクリス科の多くの属がハリモドキ亜科として再編成されました。

重要な草本の園芸種とその所属

  • シクラメン (Cyclamen persicum) – ツツジ亜科
  • サクラソウ (Primula sieboldii) – サクラソウ科(ツツジ目)
  • ドデカテオン (Dodecatheon meadia) – サクラソウ科(ツツジ目)
  • イワウチワ (Shortia uniflora) – ディアペンシア科(ツツジ目)

ツツジ科の園芸におけるアレロパシーとその対策

アレロパシー:

 ツツジ類は、根や落葉から他の植物の生育を阻害する化学物質を放出します。これにより、ツツジの周辺で他の植物が育ちにくくなる「イヤ地現象」が起こります。

対策:

  • 土壌の入れ替え:ツツジを植え替える際は、古い土を十分に除去し、新しい土と入れ替えます。
  • 活性炭の使用:土壌に活性炭を混ぜることで、アレロパシー物質を吸着し、その影響を軽減できます。
  • 輪作:ツツジを植えていた場所に別の植物を植える際は、一定期間空けるか、土壌改良を行います。
  • 混植の工夫:アレロパシーの影響を受けにくい植物を選んで混植します。

ツツジ科の園芸における菌根菌との共生とその対策

共生関係:

 ツツジ類は、エリコイド菌根菌と呼ばれる特殊な菌類と共生関係を持ちます。この共生関係は、ツツジの栄養吸収や耐病性に重要な役割を果たします。

対策(共生関係の促進):

  • 適切な土壌pH:ツツジが好む弱酸性(pH 4.5-6.0)を維持し、菌根菌の活動を促進します。
  • 有機物の添加:腐葉土やピートモスを土壌に混ぜ、菌根菌の生育環境を整えます。
  • 菌根菌の接種:市販のエリコイド菌根菌製剤を使用して、共生関係の確立を促進します。
  • 移植時の注意:根に付着した土ごと移植し、既存の菌根菌を保護します。
  • 化学肥料の過剰使用を避ける:過度の化学肥料は菌根菌の活動を阻害する可能性があります。

これらの対策を適切に実施することで、ツツジ類の健康的な生育と美しい開花を促進することができます。

ツツジ目の主な22科と代表的な園芸種

  1. ツリフネソウ科 (Balsaminaceae)
  2. ツツジ科 (Ericaceae)
  3. カキノキ科 (Ebenaceae)
  4. サラセニア科 (Sarraceniaceae)
  5. ペンタフィラクス科 (Pentaphylacaceae)
  6. エゴノキ科 (Styracaceae)
  7. ハイノキ科 (Symplocaceae)
  8. テトラメリスタ科 (Tetrameristaceae)
  9. ツバキ科 (Theaceae)
  10. マタタビ科 (Actinidiaceae)
  11. リョウブ科 (Clethraceae)
  12. イワウメ科 (Diapensiaceae)
  13. フォウキエリア科 (Fouquieriaceae)
  14. マルクグラビア科 (Marcgraviaceae)
  15. ヤッコウソウ科 (Mitrastemonaceae)
  16. ハナシノブ科 (Polemoniaceae)
  17. サクラソウ科 (Primulaceae)
  18. ロリドゥラ科 (Roridulaceae)
  19. サポタ科 (Sapotaceae)
  20. シフォノドン科 (Sladeniaceae)
  21. キリラ科 (Cyrillaceae)
  22. レクチス科 (Lecythidaceae)

これらの科には、園芸的に重要な種が多く含まれており、観賞用や実用的な目的で広く栽培されています。

ツツジ目の今後

 ツツジ目は、分子系統学的手法の発展により、近年急速に分類体系が変化している植物群です。今後も更なる研究により、科や属の分類が変更される可能性があります。また、ツツジ目は多くの美しい花を咲かせる植物を含み、園芸的に重要な植物群です。しかしながら、開発や環境破壊によって、一部の種は絶滅の危機に瀕しています。ツツジ目の多様性を保全するためには、生息地の保護や、持続可能な利用を進めていく必要があります。

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